事務員が採用できない|バックオフィスをAIと仕組みで回す方法

長年支えてくれた事務員さんが退職することになり、慌てて求人を出したものの後任が見つからない。請求書の発行や経費の処理が滞り、社長や営業が夜にバックオフィス業務をこなしている——。中小企業でよく聞くお悩みです。実は今、事務員の採用は構造的に難しくなっており、「良い人が来るまで待つ」は危険な賭けになりつつあります。この記事では、採用に再挑戦する前にやるべき「事務の仕事の分解」と、AIと仕組みでバックオフィスを回す方法を一緒に整理します。
⏱ 忙しい人向け 3行まとめ
- 事務職は応募が集まりやすい職種と言われる一方、中小企業には条件面で人が流れてきにくいのが実情
- 「事務員1人分の仕事」は分解すると大半が定型業務。AIとツールで肩代わりできる部分が最も大きい職種でもある
- 目指すのは「事務員ゼロ」ではなく、人にしかできない仕事だけを人がやる体制。採用要件も軽くなり、募集も楽になる
事務員が採用できないのはなぜか
「事務職は人気があるはずなのに、うちには応募が来ない」——この矛盾には理由があります。事務職を希望する人は確かに多いのですが、その応募は在宅勤務や時短が選べる会社、給与水準の高い大手や都市部の企業に集中しやすいのです。さらに大手ではバックオフィスのシステム化が進み、事務職の求人自体を減らす動きもあります。結果として、紙の書類や電話対応が多く残る会社ほど敬遠される、という厳しい構図になっています。
もうひとつ見落とされがちなのが、「1人の事務員さんに全部任せる」体制そのものの危うさです。仮に採用できても、その方が退職すれば同じ危機が再来します。採用の成否とは別に、バックオフィスを特定の1人に依存しない形へ変えていくことが、実は根本の解決策です。
派遣や紹介会社に頼る前に
人材派遣や紹介会社を使う手もありますが、事務職は派遣でも需給が締まっており、紹介手数料は年収の3割前後が相場観です。「高いお金をかけて採った人にも、結局引き継げる資料がない」状態では同じことの繰り返しになります。どの手段を選ぶにしても、先に業務の中身を見えるようにしておくことが土台になります。
採用の前に「事務の仕事」を分解してみる
「事務員さんの仕事」とひとくくりにされている業務を書き出してみると、性質の違う仕事が混ざっていることに気づきます。大きく3種類に分けられます。
📋 定型業務(大半を占める)
請求書の発行・入金確認・経費精算・データ入力・勤怠集計など、手順が決まっている繰り返し作業
💬 対応業務
電話・来客・メールの一次対応。即答が必要に見えて、実は型で返せるものが多い
🤝 判断・調整業務
社内外との調整、イレギュラー対応、経営者のサポート。人にしかできない部分
採用が難しいのは「この3つを全部できる人」を探しているからです。分解してしまえば、定型業務はAIとツール、対応業務は型化と自動応答、残った判断・調整業務だけを人が担う——という設計ができます。求人を出すにしても「フルタイムで事務全般」より格段に採用しやすい要件になります。求人票側の改善は求人を出しても応募が来ない|採用以外の3つの打ち手でも詳しく解説しています。
バックオフィスをAIと仕組みで回す3ステップ
いきなりツールを契約するのではなく、次の順番で進めるのが確実です。
STEP1:事務業務を1週間ぶん書き出す
今の担当者(いなければ代行している人)に、1週間やったことを箇条書きで記録してもらいます。「請求書発行 2時間」「電話対応 1日10件」という粒度で十分です。
STEP2:「手順が決まっているか」で仕分ける
マニュアルにできる業務はAI・ツール化の候補、都度判断が必要な業務は人が残す仕事です。多くの会社で、時間ベースの過半が前者に入ります。
STEP3:時間を食っている定型業務から1つずつ置き換える
効果が大きい順に、1業務ずつ1ヶ月試します。最初から全部を置き換えようとせず、「浮いた時間」を測りながら広げていきます。
事務業務別|AI・ツールに任せやすい仕事の目安
置き換えやすさの目安を業務別にまとめました。どこから手をつけるかの参考にしてください。
| 業務 | 任せやすさ | 任せ方の例 |
|---|---|---|
| 請求書・見積書の作成 | ◎ | 販売データからの自動発行、AIによる下書き作成 |
| 経理の入力・仕訳 | ◎ | 領収書・請求書の読み取り、仕訳の下書きをAIが提案 |
| 議事録・報告書 | ◎ | 会議の録音から自動で文字起こし・要約 |
| 電話・問い合わせ対応 | ○ | 一次受付の自動応答、よくある質問の自動回答 |
| スケジュール・来客調整 | ○ | 日程調整ツール+AIによるメール下書き |
| 社内外の調整・交渉 | △ | 人が担当。AIは資料や文面の準備で補助 |
特に経理まわりは置き換えの効果が出やすい領域です。具体的なツールの選び方や進め方は経理・バックオフィスのAI効率化 完全ガイドで詳しくまとめています。
外注(オンラインアシスタント)との使い分け
「AIか外注か」で迷う方も多いのですが、二択ではなく役割分担で考えるのがおすすめです。
毎日・毎週発生する定型作業。件数が多いほど効果が大きい。月数千円〜数万円で毎日休まず動き続ける。
月次の給与計算や決算補助など、専門知識が必要で頻度が低い業務。オンラインアシスタントは月数万円〜10万円台が相場観。
注意
外注に「今のやり方のまま」丸投げすると、ブラックボックスが社外に移るだけになりがちです。外注する場合も、手順を書き出してから渡すのが原則。この手順書はそのままAI化・採用時の教育にも使えます。
導入費用は補助金で抑えられる可能性がある
バックオフィスのAI・ツール導入は、国や自治体の補助金・助成金の対象になるケースがあります。要件次第で導入費用の1/2〜2/3程度が補助される制度もありますが、公募回・年度によって内容が変わるため、最新情報は公式や専門家に確認してください。詳しくはAI導入に使える補助金・助成金 完全ガイド【2026年版】をご覧ください。
つまずきポイント
「今の事務員さんが協力してくれない」問題
在職中の事務員さんがいる場合、業務の書き出しやAI化を「自分の仕事を奪う話」と受け取られると進みません。伝えるべきは「辞めても会社が困らない体制」ではなく「あなたが休める体制」を作るという目的です。実際、属人化がほどけて一番楽になるのは本人です。最初の1業務も、本人が一番面倒に感じている作業から選ぶと協力を得やすくなります。
よくある質問
Q. パソコンが得意な社員がいなくても、事務のAI化はできますか?
A. できます。最近の業務用AIツールは、チャットに日本語で指示するだけで使えるものが増えており、専任のIT担当は必要ありません。設定の初期段階だけ外部の支援を受け、日常運用は現場で回すという形も一般的です。
Q. 事務員1人分の仕事を、本当にAIで置き換えられますか?
A. 「1人分まるごと」の置き換えは目指さない方が現実的です。定型業務をAIとツールに渡して業務量を減らし、残った仕事をパート・時短の方や既存メンバーで担う、という組み合わせで「1人分の欠員をカバーする」のが実際に多いパターンです。
Q. 何から相談すればいいか分かりません。
A. 「事務員さんが辞めてしまう」「何をやっているか本人しか分からない」という状態のままで大丈夫です。業務の書き出しの段階から一緒に進められますので、今の状況をそのままお聞かせください。
「人が足りないのに、何から手をつければいいか分からない」——そんな時は。
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