業務別AI活用

シフト作成・勤怠管理をAIで自動化する|属人化した「あの人しか組めない」を解く

最終更新:2026.08.14 / AI参謀 編集部
シフト作成・勤怠管理をAIで自動化する|属人化した「あの人しか組めない」を解く

毎月末になると、店長や管理者が半日〜1日かけてシフト表とにらめっこしている——。しかもそのシフトは「あの人にしか組めない」状態になっていて、休むに休めない。中小企業でよく起きているこの状況は、AIとシフト管理ツールの組み合わせでかなり軽くできます。この記事では、AIで自動化できる範囲とできない範囲を切り分けたうえで、自社に合う進め方を一緒に整理していきます。

⏱ 忙しい人向け 3行まとめ

  • シフト作成が重いのは作業量のせいではなく、「条件が人の頭の中にしかない」から。AI化の本質は条件の言語化
  • AIが得意なのは希望と制約を満たす「たたき台」を数分で作ること。最終判断と人間関係の調整は人が残す
  • 先にやるべきは希望収集と勤怠データの一本化。ここが紙・LINE・口頭のままだと、どんなツールを入れても効果は出にくい

シフト作成に時間がかかる本当の理由

シフト作成が大変なのは、マス目を埋める作業そのものではありません。埋めながら、頭の中で大量の条件を同時に処理しているからです。

📋 制度上の条件

法定労働時間、休憩、扶養の範囲、有給、契約上の勤務日数

🙋 本人の希望

出られない日、入りたい曜日、掛け持ちの都合、通学・育児の事情

🏪 現場の必要

時間帯ごとの必要人数、資格保有者の配置、繁忙日の厚み

🤝 言語化されない事情

相性、教育中のペア、ベテランを分散させる配慮

このうち上の3つはルールとして書き出せる条件です。そして書き出せる条件を大量に満たす組み合わせを探す作業は、人間よりコンピューターが圧倒的に速い領域です。一方で4つ目は、そもそもデータになっていません。シフト作成の属人化とは、この4つが全部ひとりの頭の中で処理されている状態のことです。

だからこそ、AI化の第一歩はツール選びではなく「頭の中にある条件を紙に出すこと」になります。ここを飛ばして導入すると、出てきたシフト案が現場の実態と噛み合わず、「結局手で直したほうが早い」となって使われなくなります。

AIで自動化できる範囲・できない範囲

期待値を最初に揃えておきましょう。「シフトを全部AIに任せる」ではなく、「工程ごとに担当を分ける」と考えると失敗しません。

工程AI・ツールの担当人が残す判断
希望の収集スマホから提出・自動集計・締切のリマインド出し忘れた人への声かけ
たたき台の作成条件を満たす組み合わせを自動生成(数分)条件そのものの設定
不足・超過の検知人員不足、法定時間の超過、扶養の壁の接近を警告どこを優先して埋めるかの方針
最終調整変更に伴う影響の自動再計算相性・育成・その日の空気を踏まえた微調整
周知・変更対応確定シフトの配信、交代募集の通知個別事情のフォロー
勤怠との突合打刻との差分検出、集計、給与ソフトへの連携例外的な打刻の承認
💡

ここがポイント

効果が最も大きいのは、実は「たたき台の作成」よりも「希望の収集」と「勤怠との突合」です。前者は月1回の山ですが、後者は毎日・毎月発生し続ける地味な作業だからです。自動化の順番を間違えないようにしましょう。

なお、「AIシフト」と一口に言っても中身は2種類あります。ひとつは条件を数式的に解いて最適な組み合わせを出すタイプ(シフト管理ツールの自動作成機能に多い)。もうひとつはChatGPTのような生成AIに条件を文章で渡して案を出させるタイプです。後者は手軽ですが、法定時間の管理や勤怠連携までは面倒を見てくれません。継続運用するなら前者、まず感触を掴むだけなら後者、という使い分けが現実的です。

生成AIで「たたき台」を試してみる

いきなりツールを契約する前に、手元の生成AIで1回試してみると、条件の言語化がどれくらい進んでいるかが分かります。以下は、条件を渡してシフト案を出させるときの指示の型です。

シフトのたたき台を作らせるプロンプト例

あなたは店舗運営の管理者です。以下の条件で、来週1週間(月〜日)のシフト案を表形式で作ってください。
【営業時間】10:00〜20:00
【必要人数】平日:10-14時は2名、14-18時は3名、18-20時は2名/土日は各時間帯+1名
【メンバーと契約】A(社員・週5・開店担当可)、B(パート・週3・15時まで)、C(学生・平日夕方以降のみ)…
【今週の希望休】Bは水曜、Cは金曜
【守る条件】1人あたり連続勤務は5日まで/6時間超の勤務には休憩45分/Cは週20時間以内
条件を満たせない箇所があれば、埋めずに「不足」と明示し、その理由も書いてください。

⚠️

試すときの注意

従業員の氏名・連絡先・勤務時間などは個人情報です。社外の生成AIサービスに入力する際は、氏名をA・B・Cのような記号に置き換えるなど、社内ルールに沿って扱ってください。労働時間の管理や割増賃金の計算をAIの出力だけで判断するのも避け、必ず社内の規程と専門家の確認を通してください。

この一手間で分かるのは、AIの実力よりも「自社の条件がどれだけ言葉になっているか」です。プロンプトを書きながら手が止まるなら、それがそのまま属人化の中身です。

ツールを選ぶときの5つの基準

シフト管理・勤怠管理のツールは数多くあり、優劣を一律に決めることはできません。自社にとっての適合を測る物差しを持つほうが確実です。

  1. 基準1:自社の業態の「制約」を表現できるか

    時間帯別の必要人数、資格者の必須配置、複数店舗の応援、夜勤の連続制限——自社で絶対に外せない条件が設定項目として存在するかを、体験版で必ず確認します。ここが合わないと自動作成は使い物になりません。

  2. 基準2:希望収集がスマホで完結するか

    従業員側の使いやすさが、そのまま定着率になります。アプリのインストールが必要か、LINEで完結するか、ITが苦手な人でも迷わないか。管理者側の画面より、まず従業員側の画面を見てください。

  3. 基準3:勤怠・給与とどこまで繋がるか

    シフト作成だけを切り出すと、打刻データとの突合や給与ソフトへの取り込みが手作業で残ります。既に使っている勤怠・給与システムと連携できるか、CSVで出し入れできるかを確認します。

  4. 基準4:法定・契約上の上限を警告してくれるか

    労働時間の上限、休憩の付与、扶養の範囲の接近などを自動で知らせてくれる機能は、ミス防止の価値が大きい部分です。ただし最終的な法令対応の責任は会社側にあるため、あくまで補助として捉えます。

  5. 基準5:作った人以外が引き継げるか

    設定が複雑すぎて「今度はツールの担当者が属人化する」のでは意味がありません。設定内容が一覧で見えるか、マニュアルやサポートが日本語で用意されているかを見ます。

うまくいく選び方

自社の絶対条件を3つ書き出してから体験版を触る。従業員側の画面を先に確認する。既存の勤怠・給与との繋がりを最初に確かめる。

ありがちな失敗

機能の多さと知名度で決める。管理者だけで試して現場に降ろす。導入後に「うちの勤務形態は設定できない」と判明する。

費用の考え方と、効果の測り方

シフト・勤怠系のクラウドツールは、従業員1人あたり月数百円程度からの従量課金が一般的な形です。自動シフト作成のような高度な機能は上位プランやオプションになることが多く、初期設定の支援を依頼すれば別途費用がかかります。実際の金額は提供形態や機能によって幅があるため、必ず自社の人数・条件で見積りを取ってください。

判断は金額の大小ではなく、「今かかっている時間」との比較で行います。測り方はシンプルです。

作成時間
シフト作成にかかる時間(月)
修正時間
確定後の調整・連絡にかかる時間(月)
集計時間
勤怠の集計・突合にかかる時間(月)

①+②+③に、その作業をしている人の時間単価を掛ければ、現状のコストが出ます。管理者や店長がやっている場合、この単価は決して安くありません。加えて、その時間が「本来やるべき仕事」を押し出しているという機会損失もあります。数字にしてみると、判断は思ったより簡単になることが多いはずです。

導入の進め方(4ステップ)

  1. STEP1:条件を書き出す(1〜2時間)

    時間帯別の必要人数、資格や役割の要件、個々の契約条件、絶対に守るルールを一枚にまとめます。ツール選びより先です。この作業自体が、属人化を解く一番の近道になります。

  2. STEP2:希望の出し方を一本化する(1ヶ月)

    紙・LINE・口頭で散らばっている希望を1つの窓口に集約します。ツール導入前でも、共有の表に統一するだけで転記の手間が消えます。ここで現場の反応も見えます。

  3. STEP3:1部署・1店舗で試す(1〜2ヶ月)

    いきなり全社に広げず、代表的な1拠点で回します。AIが出した案と、人が作った案を並べて比べるのがおすすめです。差が出た箇所に、言語化できていない条件が隠れています。

  4. STEP4:勤怠・給与まで繋いで横展開

    シフトが安定したら、打刻データとの突合・集計を繋ぎます。ここまで来て初めて「毎月の作業」が本当に減ります。効果が数字で見えたら他拠点へ広げます。

📌

勤怠とセットで考える理由

シフト作成だけを自動化しても、実績(打刻)との差分を人が目で追っていれば、月末の負担はあまり変わりません。「予定(シフト)」と「実績(勤怠)」が同じデータの上に乗っている状態にすることが、省人化の効き目を決めます。ツールを選ぶ段階から、この繋がりを前提に見ておきましょう。

補助金で導入費用を抑えられる場合があります

シフト管理・勤怠管理のクラウドツールは、業務の効率化に使うITツールとして補助制度の対象になる場合があります。中小企業向けには、ITツールの導入を支援する「デジタル化・AI導入補助金」や、省力化のための設備・システム導入を支援する「中小企業省力化投資補助金」などがあり、対象となるツールや経費の範囲は制度ごとに定められています。

また、労働時間の削減や賃金引上げに取り組む中小企業を支援する厚生労働省の助成金の中にも、設備・システム導入費用を対象とするものがあります。シフト管理の効率化は労働時間の適正化に直結するテーマのため、検討の余地があります。

⚠️

制度は年度・公募回で変わります

補助率・上限額・対象経費・締切は公募回や年度によって変わります。また、補助金は原則として交付決定の前に契約・発注したものは対象外になるなど、手続きの順番にも決まりがあります。最新の要件は必ず各制度の公式サイトと公募要領で確認し、判断に迷う場合は専門家に相談してください。

つまずきポイント

「AIが組んだシフトは冷たい」と言われてしまう

条件だけで最適化すると、特定の人に負担が寄ったり、いつも同じ組み合わせになったりします。これはツールの問題ではなく、条件に「配慮」が入っていないだけです。「新人は必ずベテランと同じ時間帯に入れる」「不人気シフトは均等に回す」といった方針も、ルールとして設定に加えてください。AIは書かれていない優しさは再現できません。

導入したのに、結局手作業に戻る

いちばん多い原因は、例外的な勤務形態が1つだけ設定できず、そこを手で直しているうちに全体が手作業に戻るケースです。体験版の段階で、いちばん複雑な週のシフトを実際に組んでみるのが確実な回避策です。うまくいく週ではなく、いちばん難しい週で試してください。

よくある質問

Q. パート・アルバイトの希望をLINEでバラバラに受け取っています。それでもAIシフトは使えますか?

A. 使えますが、まずは希望の集め方を1本化するところから始めるのが近道です。多くのシフト管理ツールには従業員がスマホから希望を出す機能があり、そこに集約するだけで転記作業がなくなります。AIによる自動作成は、希望が構造化されたデータで揃って初めて力を発揮します。

Q. AIが作ったシフトをそのまま公開してもいいのでしょうか?

A. 最初のうちは必ず人が確認してから公開することをおすすめします。相性・力量・当日の事情など、データに入っていない要素は必ず残ります。AIは「たたき台を数分で出す係」、責任者は「最後の調整と判断をする係」と役割を分けると、無理なく運用に乗ります。

Q. 小さな会社でも費用に見合いますか?

A. 判断基準は従業員数より「シフト作成にかかっている時間」です。毎月10時間を超えているなら検討する価値があります。逆に、人数が少なくパターンも固定なら、既存の勤怠ツールの機能で十分なこともあります。時間で測ってから決めるのが確実です。

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