個人事業主・小規模事業者が使えるAI補助金|「うちみたいな規模でも使える?」に答える

「AI補助金って、うちみたいな一人でやっている事業でも使えるんですか?」——この質問は本当によくいただきます。答えは「使える制度は複数ある。ただし制度ごとに条件が違う」です。個人事業主だから門前払い、ということはありません。この記事では、個人事業主・従業員数名の小規模事業者が現実的に候補にできるAI関連の補助金・助成金を、規模や雇用の有無ごとに整理していきます。
⏱ 忙しい人向け 3行まとめ
- デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)は個人事業主も対象。AIツール・業務ソフトの導入なら、まずここが第一候補
- 販路開拓を含むなら持続化補助金、設備ごと省人化するなら省力化投資補助金(カタログ注文型)、従業員の賃上げとセットなら業務改善助成金が候補になる
- ただし「従業員ゼロだと使えない制度」「雇用保険加入者が必要な制度」がある。自分の事業の形に合う制度から選ぶのが近道
「個人事業主はAI補助金を使えない」は誤解
補助金と聞くと、工場を持つ製造業や社員数十人の会社が使うもの、というイメージを持たれがちです。しかし国の中小企業向け補助金の多くは、対象者の定義に「中小企業者等」として個人事業主(個人であって事業を営む者)を含んでいます。むしろ小規模事業者向けに補助率が優遇される制度もあるほどです。
一方で、「個人事業主なら何でも使える」わけでもありません。制度ごとに見るべきポイントは、おおむね次の3つに集約されます。
① 事業の規模
従業員数(例:商業・サービス業なら5人以下が「小規模事業者」)で対象や上限が変わる
② 雇用の有無
従業員を雇っていない「ひとり事業主」は対象外になる制度がある(雇用系の助成金など)
③ 何に使うか
ソフト・ツールの導入か、設備の購入か、販路開拓か——用途で使う制度が変わる
この3つを押さえたうえで、代表的な制度を順に見ていきましょう。
第一候補:デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)
AIツールや業務ソフトの導入費用を補助してほしい——という場合、最初に検討すべきはデジタル化・AI導入補助金です。2026年度に旧IT導入補助金から再編された制度で、AIを活用した省人化・省力化に予算が重点配分されています。
この補助金は個人事業主も対象です。会計ソフト・予約管理・受発注システムといった従来型のITツールに加え、AIを組み込んだツールの導入は優先度が上がりやすい設計になっています。飲食・小売であれば、インボイス対応類型(インボイス枠)でスマートレジ・券売機などのハードウェアが対象になる場合もあります。
「登録ツール型」だから、ひとり事業主でも進めやすい
この補助金は、事務局に登録されたIT導入支援事業者(ベンダー)と組んで、登録済みツールを導入する仕組みです。申請書類の作成をベンダーが伴走してくれるため、事務スタッフがいない個人事業主でも申請のハードルが比較的低いのが実務上の利点です。逆に言えば「使いたいツールが登録されているか」が最初の確認ポイントになります。
注意点もあります。ChatGPTなどの汎用AIチャットの利用料単体は対象にならないケースが一般的で、あくまで「業務プロセスを改善するツールの導入」が軸です。枠や要件は公募回ごとに変わるため、最新の公募要領で対象者要件・対象経費を確認してください。
用途別:ほかに候補になる3つの制度
「ツール導入」以外の投資や、賃上げ・販路開拓と組み合わせる場合は、次の制度が候補に入ります。
| 制度 | 向いている使い方 | 個人事業主のポイント |
|---|---|---|
| 小規模事業者持続化補助金 | 販路開拓+業務効率化(HP改修・予約システム等を含む計画) | 小規模事業者が主対象。個人事業主OK。商工会・商工会議所の支援を受けて申請 |
| 省力化投資補助金(カタログ注文型) | カタログ掲載の省力化製品(配膳ロボット・券売機・自動化設備等)の導入 | 従業員5名以下でも補助上限200万円(賃上げ要件達成で300万円)※2026年8月時点 |
| 業務改善助成金 | 従業員の賃上げとセットの設備投資・システム導入 | 従業員がいない場合は対象外。雇用保険被保険者の賃上げが要件 |
それぞれ簡単に補足します。
小規模事業者持続化補助金:販路開拓とセットで使う
持続化補助金は「小規模事業者」(商業・サービス業は従業員5人以下、製造業その他は20人以下が目安)を対象にした、まさに小さな事業者のための補助金です。一般型・通常枠の補助上限は50万円で、特例の活用により上乗せの仕組みがあります。AIツール単体というより、「集客の仕組みづくり」の中にAI・ITを組み込む使い方(予約システム導入、AIチャット付きホームページ改修など)に向いています。直近の第20回は2026年11月5日受付開始・12月15日締切の予定です。
省力化投資補助金(カタログ注文型):設備で省人化するなら
飲食店の配膳ロボットや券売機、清掃ロボットのような「モノ」で省人化したい場合は、省力化投資補助金のカタログ注文型が候補です。事務局のカタログに掲載された製品から選んで申請する方式で、事業計画の作り込み負担が比較的軽く、公募締切に縛られず随時申請できます(2026年8月時点)。従業員5名以下の区分でも補助上限200万円(賃上げ要件達成で300万円)と、小規模事業者にも現実的なサイズ感です。
業務改善助成金:従業員を雇っているなら要チェック
従業員を雇っていて、最低賃金付近の時給で働くスタッフがいる場合は、業務改善助成金(厚生労働省)も有力です。事業場内の最低賃金を引き上げ、あわせて生産性向上の設備投資・システム導入を行うと、費用の一部が助成されます。ただしこの制度は労働者がいない事業主は対象外で、賃上げ対象も雇用保険被保険者に限られます。「ひとり事業主」は使えない点に注意してください。
金額・要件は必ず最新情報で確認を
本記事で挙げた補助上限額・対象要件・スケジュールは、いずれも執筆時点(2026年8月)の公表情報にもとづく概要です。制度は公募回・年度で変わります。申請前に必ず各制度の公式サイト・最新の公募要領で確認してください。法務・税務の判断が絡む場合は専門家への相談をおすすめします。
自分に合う制度を見つける3ステップ
制度が複数あると迷いますが、選び方は意外とシンプルです。次の順で絞り込んでいきます。
STEP1:雇用の有無で絞る
従業員ゼロなら、業務改善助成金など雇用系は候補から外れる。デジタル化・AI導入補助金と持続化補助金が軸になる
STEP2:「何に使うか」で選ぶ
ソフト・AIツール→デジタル化・AI導入補助金/設備・ロボット→省力化投資補助金/販路開拓込み→持続化補助金
STEP3:スケジュールを確認する
各制度の受付期間・締切を公式サイトで確認し、見積り取得やgBizID(電子申請アカウント)の準備を逆算で進める
なお、国の制度のほかに、都道府県・市区町村が独自のDX・AI導入補助金を設けていることもあります。地元の商工会議所や自治体のサイトも一度チェックしてみてください(自治体の制度の探し方は、別の記事で詳しく取り上げる予定です)。
つまずきポイント
ありがちな失敗①:「補助金ありき」でツールを選んでしまう
補助金の対象だからという理由で、本来の困りごとに合わないツールを選ぶと、導入後に使われなくなります。順番は逆で、まず「何の作業に時間を取られているか」を書き出し、それを解決するツールを選び、そのうえで使える補助金を探す。この順番なら、仮に不採択でも投資判断そのものは間違いません。
ありがちな失敗②:申請準備の時間を見積もっていない
個人事業主は申請作業も自分でやることになりがちです。gBizIDプライムの取得には日数がかかり、見積り取得や計画書作成にも時間が必要です。締切直前に着手して断念するケースは少なくありません。「使う」と決めたら、締切の1ヶ月以上前から着手するのが現実的な目安です。
よくある質問
Q. 開業したばかりでも補助金は使えますか?
A. 制度によります。創業間もない事業者を対象に含む制度もあれば、直近の事業実績(確定申告書など)の提出を求める制度もあります。開業届や確定申告の状況を整理したうえで、各制度の公募要領にある対象者要件を確認してください。商工会議所の窓口で相談すると、自分が対象になる制度を教えてもらえます。
Q. ChatGPTの有料プランの料金は補助対象になりますか?
A. 汎用AIチャットの利用料単体は、補助対象にならないケースが一般的です。補助金はあくまで「業務プロセスを改善するツール・設備の導入」を対象にする設計が中心のため、ChatGPT単体ではなく、業務に組み込まれたAIツールやシステムの導入として計画するのが現実的です。対象経費の範囲は公募回ごとに変わるため、最新の公募要領で確認してください。
Q. 申請を代行してもらうことはできますか?
A. デジタル化・AI導入補助金は、登録されたIT導入支援事業者が申請を伴走する仕組みが制度に組み込まれています。持続化補助金は商工会・商工会議所の支援を受けて申請します。それ以外でも補助金サポートを行う専門家はいますが、「採択保証」「成功報酬だけで高額」といった勧誘には注意が必要です。まずは公的な窓口(商工会議所・よろず支援拠点)への相談から始めるのが安全です。
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