AI研修・リスキリングに使える助成金|人材開発支援助成金の活用ポイント

「社員にAIを使えるようになってほしい。でも研修費用までは出しづらい」——そんな会社のために、国はAI研修・リスキリングの費用を助成する制度を用意しています。本命は厚生労働省の人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)。中小企業なら研修費用の75%に加え、受講中の賃金への助成まであります。この記事では、対象になる研修とならない研修の線引き、申請の流れ、ツール導入補助金との使い分けを一緒に整理していきます。
⏱ 忙しい人向け 3行まとめ
- AI研修の助成は人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)が本命。中小企業は経費の75%+賃金助成1時間1,000円
- 令和8年8月の改正で「業務に直結する研修は対象、汎用的なAIリテラシー研修は対象外」という線引きが明確になった
- 計画届は訓練開始の6か月前〜1か月前に提出が必要。研修を始めてからでは間に合わない。制度は公募回・年度で変わるため最新は公式で確認を
AI研修に使える助成金は「人材開発支援助成金」が本命
AI導入まわりの支援制度は「ツールを買うお金」と「人を育てるお金」で管轄が分かれています。ツール・システムの導入費用を支援するのが経済産業省系の補助金(デジタル化・AI導入補助金、省力化投資補助金など)、研修・教育の費用を支援するのが厚生労働省の助成金です。
人材開発支援助成金など。要件を満たせば受給できる仕組みで、採択・不採択の競争がない。
デジタル化・AI導入補助金など。公募期間内に申請し、審査・採択を経て受給する競争型。
人材開発支援助成金にはいくつものコースがありますが、AI・DXの研修でまず検討すべきは事業展開等リスキリング支援コースです。新規事業への展開や、業務のデジタル化(DX化)に伴って必要になる知識・技能の習得を支援するコースで、生成AIの業務活用研修はまさにここに当たります。なお本コースは令和4〜8年度の期間限定として創設された制度です。このほか高度なデジタル人材の育成には「人への投資促進コース」もあります(詳細は厚労省サイトで確認してください)。
「補助金」と「助成金」の違い
補助金は予算と採択枠があり、申請しても通らないことがあります。一方、厚労省系の助成金は要件を満たして正しく手続きすれば原則受給できる仕組みです。そのぶん、計画届の提出期限や書類の要件が細かく決まっており、手続きの正確さが問われます。
いくらもらえるか|助成率と限度額
事業展開等リスキリング支援コースの助成内容(令和8年8月3日版パンフレットにもとづく)は次のとおりです。
| 企業規模 | 経費助成 | 賃金助成(1人1時間当たり) | 設備投資加算 |
|---|---|---|---|
| 中小企業 | 75% | 1,000円 | 導入費用の50% |
| 大企業 | 60% | 500円 | - |
経費助成には1人1訓練あたりの限度額があります(中小企業事業主の場合)。
| 実訓練時間 | 経費助成の限度額 |
|---|---|
| 10時間以上100時間未満 | 30万円 |
| 100時間以上200時間未満 | 40万円 |
| 200時間以上 | 50万円 |
| eラーニング・通信制による訓練等 | 15万円 |
たとえば経理担当者2名が20万円のAI活用研修(20時間)を受ける場合、経費助成で研修費の75%、さらに受講40時間分の賃金助成4万円が加わるイメージです。「研修費が実質4分の1になり、受講中の人件費も一部戻る」と考えると、社内で稟議を通しやすくなります。ただし、助成率・限度額・要件は支給要領の改正で変わります。申請前に必ず最新の公式情報を確認してください。
対象になるAI研修・ならないAI研修の線引き
ここが一番のつまずきどころです。令和8年8月3日の改正で、DX化・GX化に関する訓練のうち「職務に間接的に必要となる知識」「職業人として共通して必要なもの」は助成対象外と整理されました。生成AI研修でいうと、次のような線引きになります。
| 訓練の例 | 取扱い | 理由 |
|---|---|---|
| 生成AIで商品提案書の構成案作成・文章生成を学ぶ営業担当者向け研修 | 助成対象 | 担当者の具体的な業務に直結し、そのまま活用できるため |
| 汎用的なプロンプトの作り方を学ぶ研修 | 対象外 | 特定の業務への具体的適用を伴わないため |
| DXの概念・デジタル技術の概要を学ぶ研修 | 対象外 | リテラシー・概念理解にとどまるため |
あわせて「訓練内容に沿って対象労働者を選定しているか」も確認されます。同じ研修でも、その業務の担当者が受ければ対象、無関係な部署の人が受ければ対象外——つまり「誰の・どの業務を・どう速くする研修か」を言える形にすることが、対象になるかどうかの分かれ目です。また、eラーニングによる訓練は同一労働者につき1年度1回までという上限も設けられています。改正の詳細は関連記事で解説しています。
申請の流れ|計画届は「研修開始の1か月前」がリミット
手続きの大枠は「計画を先に出し、実施し、後から支給申請する」の3段階です。
STEP1:研修を設計し、訓練計画届を提出する
対象業務と受講者を決め、カリキュラム・見積もりを揃えて労働局に計画届を提出します。提出期限は訓練開始日の6か月前から1か月前まで。ここを過ぎると受給できません。
STEP2:計画どおり研修を実施する
出席記録・実施記録を残しながら実施します。計画から内容や日程が変わる場合は変更手続きが必要です。
STEP3:訓練終了後に支給申請する
訓練終了後、定められた期間内に支給申請書と実施記録・経費の証憑を提出します。助成金は後払いなので、研修費はいったん全額立て替える資金繰りを想定しておきます。
- 研修日程から逆算して、計画届の提出期限(開始1か月前)に間に合うか確認したか
- カリキュラムに「対象業務名」と「業務にどう使うか」が書かれているか
- 受講者はその業務の実際の担当者になっているか
- 研修費を立て替える資金繰りを見込んだか(助成金は後払い)
ツール導入とセットで考える|補助金との使い分け
AI導入の費用は「ツール代」と「使える人を育てる研修代」の2つに分かれます。理想はツール導入は補助金、研修は助成金と、両輪で自己負担を圧縮することです。たとえば経理のAI効率化なら、ツール導入費はデジタル化・AI導入補助金の対象になり得て、経理担当者向けのAI活用研修は本助成金の対象になり得ます。どの補助金が使えるかは関連記事の完全ガイドで整理しています。
🧰 ツール・システム導入
デジタル化・AI導入補助金、省力化投資補助金など(経産省系・競争型)
🎓 研修・人材育成
人材開発支援助成金(厚労省系・要件充足型)。本記事のコース
補足:研修そのものの選び方
助成金ありきで研修会社のパンフレットから選び始めると、内容が汎用リテラシー寄りで対象外になったり、業務に落ちず「受けて終わり」になったりしがちです。順番は逆で、先に「AIに任せたい業務」を決め、その業務の担当者に必要な研修を探す——この順番なら、助成対象の要件(業務直結・受講者の妥当性)と、研修効果の両方が自然に満たせます。何から任せるかの決め方は、AI導入の費用対効果の測り方の記事も参考になります。
つまずきポイント
「全社員向けAIリテラシー研修」で申請してしまう
社内展開の第一歩として全社向けの勉強会を企画する会社は多いのですが、令和8年8月の改正で、こうした汎用的な内容は助成対象外側に整理されました。助成金を使うなら、部署と業務を特定した研修に分割して設計するのが現実的です。全社向けの意識合わせは自前の勉強会で行い、助成金は業務直結研修に充てる、という組み合わせが無駄がありません。
研修が始まってから助成金を思い出す
計画届は訓練開始の1か月前まで。すでに始まった・終わった研修には使えません。「研修をやろう」と決めた時点で、日程を仮置きしてでも先に計画届のスケジュールを引くのが鉄則です。
注意
本記事は2026年8月30日時点の公開情報にもとづく概要です。助成金の要件・助成率・限度額は年度や支給要領の改正で変わります。申請にあたっては、厚生労働省の最新のパンフレット・支給要領を確認のうえ、管轄の都道府県労働局・ハローワークまたは社会保険労務士にご相談ください。
よくある質問
Q. ChatGPTの使い方を学ぶ研修は助成対象になりますか?
A. 内容によります。営業担当者が提案書のたたき台作成を学ぶなど、特定の業務に直結する研修は対象になり得ますが、汎用的なプロンプトの作り方やAIの概念理解にとどまる研修は令和8年8月3日の改正で対象外と整理されました。カリキュラムを「誰のどの業務に使うか」で組むことが重要です。
Q. いつまでに申請すればいいですか?
A. 訓練計画届は、訓練開始日から起算して6か月前から1か月前までに提出する必要があります。研修を始めてからでは間に合わないため、研修日程が決まったらすぐ逆算してスケジュールを引いてください。助成金の受け取りは訓練終了後の支給申請を経てからになります。
Q. 研修費用のほかに助成されるものはありますか?
A. 事業展開等リスキリング支援コースでは、経費助成(中小企業75%)に加えて、訓練期間中の賃金助成(中小企業は1人1時間あたり1,000円)があります。従業員が就業時間内に研修を受ける場合の人件費負担を和らげる仕組みです。金額・要件は改正で変わるため最新は公式で確認してください。
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