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介護事業のICT・AI導入|記録業務の省力化と使える補助金

最終更新:2026.08.16 / AI参謀 編集部
介護事業のICT・AI導入|記録業務の省力化と使える補助金

職員は集まらない、しかし記録も報告も減らない——介護の現場ほど「人が足りないのに書類が多い」という矛盾が重くのしかかる業種はありません。この記事では、介護事業所がICT・AIで省力化できる業務を整理したうえで、何から手をつければ現場が楽になるのか、そして導入費用を軽くする補助金の押さえどころを、一緒に順を追って考えていきます。

⏱ 忙しい人向け 3行まとめ

  • 介護のICT・AI導入で最初に効くのは「記録」。音声入力とスマートフォンでの入力に変えるだけで、1人あたり1日30分前後の記録時間が動くことがある
  • 順番は記録 → 情報共有 → 見守り。いきなり見守り機器から入ると、記録がバラバラのままで効果が出にくい
  • 介護分野には都道府県が実施する専用の補助事業がある。ただし内容・上限額・締切は都道府県ごと・年度ごとに違うので、自分の都道府県の公募要領で確認するのが必須

介護現場の人手不足は「記録と情報共有」に効いてくる

介護事業所の人手不足対策の話をすると、多くの管理者の方が最初に「採用」の話をされます。もちろん採用は重要です。ただ、現場に入って業務を分解していくと、直接処遇——つまり利用者さんに向き合う時間以外に、かなりの時間が積み上がっていることが見えてきます。

典型的なのが次の3つです。

📝 記録

ケア記録、バイタル、食事・排泄・入浴の記録。紙に書いてから事務所のパソコンに転記している事業所も多い

🔁 情報共有

申し送り、連絡ノート、シフト交代時の口頭伝達。伝わらなかった情報を探し直す時間も含まれる

📄 事務・請求

介護報酬請求、ケアプランのやり取り、加算要件の確認、家族への報告資料

このうち、記録は「二度手間」が起きやすい業務の代表格です。現場でメモを取り、休憩時間や勤務終了後に事務所で入力し直す。この転記の時間は、利用者さんにとっての価値を何も生みません。にもかかわらず、職員の残業時間としては確実に積み上がっていきます。

30分/日
記録の転記をなくすと動く時間の目安(1人あたり)
10人規模
なら月間で約100時間の余力に相当

※上の数字は「1日30分×職員10人×月20日」で単純計算した目安です。事業所の規模・サービス種別・現在の記録方法によって大きく変わりますので、自事業所での試算にお使いください。

介護のICT・AIで省力化できる業務

「介護にAI」と聞くと、ロボットが介助をするような場面を想像されるかもしれません。しかし実際に多くの事業所で効果が出ているのは、もっと地味で、しかし毎日発生する作業のほうです。

領域できること効きやすい事業形態
記録の音声入力話した内容をその場で文字にし、記録の文体に整える入所・通所・訪問すべて
記録ソフトスマートフォン・タブレットからその場で入力。転記をなくす入所・通所
インカム移動しながら情報共有。探しに行く時間を削る入所・大型の通所
見守り機器センサーで離床・体動を検知し、巡回の優先度をつける入所・泊まりのある事業所
シフト作成資格・勤務条件・希望を踏まえた原案を自動で作るすべて(管理者の負担が大きい業務)
文書作成家族向け報告、研修資料、議事録などのたたき台づくりすべて(管理者・相談員)

この中で最初に取り組む価値が高いのは、記録の入力方法を変えることです。理由は単純で、記録は毎日・全職員に発生する業務だからです。管理者1人の作業を効率化しても事業所全体では数時間ですが、記録は職員数の分だけ効果が積み上がります。

音声入力で「記録の文体」まで整うようになってきた

近年の変化として大きいのは、音声入力が「話した言葉をそのまま文字にする」段階から、介護記録として通用する文体に整える段階へ進んだことです。現場で口頭で伝えたような話し方をしても、記録として読める形に直してくれるツールが出てきています。

ただし注意点があります。音声入力の精度は、介護特有の用語や利用者さんのお名前をどれだけ辞書として持っているかで大きく変わります。汎用の音声入力機能をそのまま使うと、専門用語がうまく認識されず、修正の手間で結局時間が増えることがあります。介護向けに調整されているかどうかは、選定時に必ず確認したい点です。

⚠️

記録は「個人情報の塊」だと意識する

介護記録には利用者さんの心身の状況、家族関係、医療情報が含まれます。これらは特に配慮が必要な情報です。汎用の生成AIサービスに利用者情報をそのまま入力する運用は避け、介護事業所向けに提供されているサービスを使い、入力したデータがどう扱われるかを契約前に確認してください。厚生労働省の「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」も、判断の土台として一度目を通しておくことをおすすめします。

何から始めるか|記録 → 情報共有 → 見守りの順

予算が限られている場合、どの順番で入れるかで結果が変わります。おすすめは次の順序です。

  1. STEP1:記録の入力方法を変える

    紙に書いて後で転記、をやめます。スマートフォンやタブレットからその場で入力できる状態にし、音声入力を組み合わせます。ここで「記録がデータになる」ことが、後のすべての土台になります。

  2. STEP2:情報共有の経路を1本にする

    連絡ノート、口頭の申し送り、個人の携帯へのメッセージ——バラバラの経路を、記録ソフトかインカムに寄せます。「どこを見れば分かるか」が1つになるだけで、探す時間と伝達漏れが減ります。

  3. STEP3:見守り機器を必要な居室から入れる

    全室一斉ではなく、転倒リスクが高い方、夜間の対応が多い方の居室から始めます。記録がデータになっていれば、検知の履歴と記録を突き合わせて「本当に効果があったか」を確認できます。

  4. STEP4:管理業務(シフト・書類)に広げる

    現場が落ち着いてから、管理者側の負担に手をつけます。シフト作成、家族向け報告、研修資料のたたき台づくりなど。ここは効果が管理者に集中するので、後回しでも構いません。

うまくいく進め方

記録から始め、現場が「楽になった」と感じてから次に進む。1フロア・1ユニットで試し、うまくいったやり方ごと横展開する。

ありがちな失敗

補助金の締切に合わせて機器を一括導入。設置はされたが記録は紙のまま、センサーの通知だけが増えて現場が疲弊する。

介護分野で使える補助金の押さえどころ

介護事業所には、一般の中小企業向け補助金とは別に、介護分野専用の補助事業が用意されています。厚生労働省は「介護テクノロジー導入・定着支援事業」として、介護ロボットやICT機器の導入を支援する仕組みを設けており、実際の公募・審査・交付は各都道府県が行います

この「都道府県が実施主体」という点が、介護分野の補助金を考えるうえで最も重要なポイントです。国が枠組みを示し、都道府県がそれぞれの実施要綱を定めるため、対象となる機器の区分・補助率・上限額・申請時期・要件が、都道府県ごとに違います。「隣の県の事業所がこう言っていた」がそのまま自分の県に当てはまるとは限りません。

💡

ここがポイント

介護分野の補助事業には、要件を満たすと補助率が引き上がる仕組みが設けられていることがあります。たとえば見守り機器・インカム等のICT機器・介護記録ソフトを組み合わせて導入する、職員が指定の研修を受講している、といった条件です。逆に言えば、単品でバラバラに入れるより、組み合わせて計画したほうが有利になりうるということです。ただし条件の詳細は都道府県・年度で異なるため、必ず自分の都道府県の公募要領で確認してください。

確認する順番

また、介護分野専用の補助事業とは別に、一般の中小企業向けの制度(デジタル化・AI導入補助金、省力化投資補助金など)を使えるケースもあります。どちらが自社に合うかは、導入したいものと事業規模によって変わります。制度の全体像は関連記事で整理していますので、あわせてご覧ください。

📌

制度は年度・公募回で変わります

補助率・上限額・対象機器・申請期限は、年度ごと、公募回ごとに変更されます。本記事は制度の「見方」を整理したもので、金額や要件を保証するものではありません。実際の申請にあたっては、必ず自分の都道府県の最新の公募要領および厚生労働省の公式情報を確認し、判断に迷う場合は都道府県の担当課や専門家にご相談ください。

つまずきポイント

「機器は入ったのに、記録は紙のまま」問題

介護分野で最も多い失敗が、補助金の締切に合わせて機器だけ先に入れてしまうケースです。見守りセンサーが通知を出しても、その内容を紙の記録に手書きで転記していては、仕事は増える一方です。順番として、記録がデータで残る状態を先に作ってください。センサーや機器は、その土台の上に乗せるものです。

「ベテラン職員が使ってくれない」問題

新しい仕組みへの抵抗は、機械が苦手だからというより「今のやり方で回っているのに、なぜ変えるのか」が腹落ちしていないことが原因であることがほとんどです。有効なのは、一番負担の大きい業務から変えること。夜勤帯の記録、勤務後に残ってやっている転記——そこが楽になれば、説得は必要なくなります。もう一つ、最初に使う人を「機械に強い若手」ではなく「現場で信頼されている中堅職員」にすると、広がり方が変わります。

よくある質問

Q. 小規模な事業所でもICT・AIの導入は意味がありますか?

A. あります。むしろ職員数が少ない事業所ほど、1人が抱える記録・事務の割合が大きくなるため、記録の省力化が経営に与える影響は相対的に大きくなります。まずは記録ソフトと音声入力という、月額の負担が比較的軽い範囲から始めるのが現実的です。全機能を一度に入れる必要はありません。

Q. 補助金はいつ申請すればいいですか?

A. 都道府県ごとに受付時期が異なり、年度の前半に受付を締め切る県もあれば、複数回に分けて受け付ける県もあります。共通して言えるのは、交付決定の前に発注・契約すると対象外になる制度が多いという点です。導入したいものが決まったら、まず自分の都道府県の担当課に「今年度の受付予定」を問い合わせるところから始めてください。要件・金額は公募回で変わるため、必ず最新の公募要領で確認が必要です。

Q. 利用者さんの情報をAIに入力しても大丈夫でしょうか?

A. 一般向けの生成AIサービスに利用者情報をそのまま入力する運用は避けてください。介護記録には特に配慮が必要な個人情報が含まれます。介護事業所向けに提供されているサービスを選び、入力したデータの保存場所・利用範囲・学習への利用の有無を契約前に確認することが前提です。あわせて、事業所として「入力してよい情報・いけない情報」を1枚のルールにまとめ、職員に共有しておくことをおすすめします。判断に迷う場合は、都道府県の担当課や専門家にご相談ください。

「人が足りないのに、何から手をつければいいか分からない」——そんな時は。

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